倉阪鬼一郎『大いなる闇の喚び声』

倉阪鬼一郎氏新刊『大いなる闇の喚び声 美術調律者、最後の戦い』早速拝読す!
http://www.soudosha.jp/Cthulhu/oinaruyami.html

…がしかし前に3巻あるというこのシリーズ(『美術調律者・影』)全く読んでません、すみません…
…でも読み始めたら何となく判ったような気がしてきた?ので、ええいもう終いまで読んじゃえ! ってことで…

…未知のシリーズゆえ読む前は〈The Cthulhu Mythos Files〉叢書で出ていいものなの? などとやや案じられもしたが、しかし本のタイトルも各章題もモロそっち系であることから湧く期待にたがわず、めくり始めるや否や〈一全教〉なるものが出てきたのでこれはもうそうだったのかと。…が前にこの叢書に入った倉阪氏の作(「回転する阿蝸白の呼び声」「闇の美術館」↓)とは大分毛色が違う。…
http://domperimottekoi.hatenablog.com/entry/2014/03/24/000000
http://domperimottekoi.hatenablog.com/entry/2014/08/26/235906
…そうこれは海鮮Cthulhuでもマラソンcthilhuでもない。作者倉阪氏はグルメやスポーツマニアというだけじゃなくいろんな趣味を持ってるのだ、パソコンでグラフィックアート描くし作曲もしてるというし…それでそちらの面をこのシリーズでガンガン表出してたというわけだったのか。…

…むむむ、これは凄い。帯に「禁断のアートホラー!」とあるが単なる惹句に非ず、言葉が独特の絵画的イメージへといつの間にかずれ込んでいく、まさにアートCthulhuだ。それは作中で描写される主人公形上影とその父=悪霊こと黒形上赤四郎の芸術作品のイメージのみならず、小説を織り成す言葉自体が──いや文字そのものからして既に〈怪画〉を描くのだ。痣屠廃★、亡在★屠廃蝶、★虞疏屠★…(←星印は漢字が出せないので)…そしてその象徴は異形の読点の群れだ。「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、」…草野心平の句点だらけの詩以上に世界を歪ませる力がこのテンテンテンテン…にはあるようだ。こうしたことはだれがやってもそうなるというものではない、同じ漢字同じ句読点のよう見えても書く作家によって異なった言霊が宿ってしまう。そして倉阪氏の場合その言霊はおよそ忌まわしく呪わしいものとなるのが常で…

…そのせいか読み嵌まっていくうちに終盤なんだか本当にページ自体が歪んでくるような気がした。ああ、オレの頭も読点の呪いに犯されかけたんだろうか…

…いかんいかん、もう少しで持ってかれるところだった…
…先日の朝松健氏 高橋洋氏のトークで両氏とも〈やつら〉が見えるらしいことを仄めかしてたが、思えば倉阪氏もまた〈やつら〉を見る力を持つ人であるに相違ない。その力に侵犯されぬよう気をつけねば…

…というわけでいきなり最終巻を読んでしまったこの美術調律者シリーズ、異色の本格長篇Cthulhu連作として遡って読みたい衝動に駆られずにはいないが、しかしその際はせめて神明宮にお参りしてからのほうがよさそうだ(お祓いは去年してもらったばかりだし)…魘魘魘魘魘魘魘魘魘魘魘魘魘魘魘魘…

倉阪さんありがとうございました!



























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