有栖川有栖『鍵の掛かった男』

有栖川有栖『鍵の掛かった男』(幻冬舎)
http://www.gentosha.co.jp/book/b9219.html
作者サイン会でサインを貰ったままだった ↓…
http://domperimottekoi.hatenablog.com/entry/2015/11/08/030157
…のをせめて連ドラ『臨床犯罪学者 火村英生の推理』OA(今夜1/17だ)までにはと──と言ってもシリーズ最新作までドラマ原作にするかは判らないが。…

タイトル(鍵の掛かった男)に漂うド真ん中ガジェット型本格パズラー風イメージとは大きく異なる徹底した地道調査系ミステリーで、なぜか(勿論外見上の〈畑〉は全く違いながらも)小野不由美残穢』を思い出させるような──そちらも比較的最近読んで強い印象を与えられた(&映画を早く観たい)せいもあり──つまり謎の追究&遡求をこれでもかとばかりに克明に記述していく筆法が。あるいはまた幕間風に挿入される有栖川有栖(登場人物のほう)の〈小説家〉としての想像力躍如の夢の中での死者との対話のくだりも見ようによっては『残穢』に通じるオカルティック味と言えなくもなく…などという横槍な感興は別にしても、このどこかしらドキュメンタリーを思わせる重層的物語は、軈ては大阪という都市の魔的な空間性や解かれゆく謎が孕む現実の時代背景まで次第に豁然と浮かびあがらせ、ある意味松本清張張り社会派推理小説(という呼称が今あるか知らないが)を狙っているのではとすら思わせる。傑作。… シリーズ物としては初期作以降の数多の中間作を抜かしているので到底良い読者とは言えないが、そんなでも差別なく迎えてくれる火村英生&有栖の決して名探偵ぶらない人柄には大好感! …それにつけても『東京結合人間』や『その可能性はすでに考えた』等のぶっ飛び過ぎ系本格ミステリーのあとに読むこのがっしり地に足のついた小説には安心安堵させられること大。


鍵の掛かった男

鍵の掛かった男






























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