H・P・ラヴクラフト『『ネクロノミコン』の物語』森瀬繚 編訳

森瀬繚 編訳 H・P・ラヴクラフト『『ネクロノミコン』の物語』(2018/5月刊 星海社FICTIONS 新訳クトゥルー神話コレクション2)読。
http://www.seikaisha.co.jp/information/2018/05/19-post-necro.html

クトゥルーの呼び声』↓に次ぐ星海社ラヴクラフト新訳集第2弾は…
http://d.hatena.ne.jp/domperimottekoi/20180113/1515822332
クトゥルー神話最大の魔書『ネクロノミコン』系譜作品の集成──であると共にその軸となる力篇「ダンウィッチの怪異」に列なる作群一望の書でもあり。
収録作は…狂詩人アブドゥル・アルハズレッド初登場作「無名都市」に始まり『ネクロノミコン』初言及作「猟犬」同書の設定/引用作「祝祭」非小説乍ら同書来歴を列記した短文「『ネクロノミコン』の歴史」その中で同書との関係示唆される名作「ピックマンのモデル」同書が本格活用される傑作「ダンウィッチの怪異」さらにその関連作「往古の民」&「アロンゾ・タイパーの日記」(ウィリアム・ラムレイによる同作初期稿も併録)…の陣容。
第1弾『クトゥルー…』と同様各作傾向により訳文の文体変える等工夫精神発揮。と同時に鍵となる言葉の訳語選択の細心さ及び精緻極まる註記さらにその敷衍とも言える各作解説が今回も圧倒的情報量で瞠目必至。作品選定の面でも関連性分析や配列の妙等編者の配慮力躍如。
本書の中心となる『ダンウィッチ…』は個人的に愛好作だが新訳の読み易さ&ダイナミックさにより面白さまで飛躍増の感拍手物。解説での「珍しくも三人称視点を用い」その結果「HPLの他のクトゥルー神話小説とは異なる重い意味が担わされ」「読者側の解釈の余地が(三人称により)一気に狭まることとなった」との指摘も目鱗。

折しも個人的に森瀬氏にお会いする機会あり本書を巡り多々お話聞け快哉。今般のクトゥルー神話ブームはやはりゲーム人気に多くを負うそうで当叢書が既訳書を超える特性(平明な訳文/参照し易い註記や地図等の配置/接し易い装画装丁)を心掛けているのはその方面の読者獲得に意識的ゆえとのことで大いに首肯。時に作品より長くなりそうな註/解の厖大なデータほぼ全て頭に入っているので書くのは割と速かったとの述懐にさらに驚き。帯には時恰も大人気中のFGO版ラヴィニア・ウェイトリーが配されているが刊行時期一致は偶然の由で強運の一端か。次巻以降も陸続準備中で期待大。サインまで頂き雀躍!


森瀬さんありがとうございました!
































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