飯野文彦『ゾンビ・アパート』

飯野文彦氏新刊『ゾンビ・アパート』(河出書房新社)早速拝読す!
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309023809/

編者日下三蔵氏の解説によれば飯野氏の雑誌掲載&単発短篇の集成は意外にも初。総数60篇以上にのぼるという未収録作群から精選した8篇+新作書き下ろし1篇。冒頭の表題作「ゾンビ・アパート」は懐かしの『獅子王』88年掲載。27年も前の作とは! 通念的なゾンビ物を超えた悪夢世界はある意味飯野版チャールズ・ウォードか? 『獅子王』からの復刻は他にもあり、異界の恋愛譚「深夜の舞踏会」、スケール大なアポカリプスSF「やがて、空から」、ユニークな怪獣(?)譚「わたしはミミ」の計4篇。『小説NON』からも1篇、グロテスク極致のストーカー譚「横恋慕」。『異形コレクション』からは恐ろしき親子愛「愛児のために」、作者自家薬籠中のアルコール夢魔譚「痴れ者」の2篇。競作集『秘神』からは傑作落語クトゥルー(!)「襲名」。書き下ろしは余韻も慄然の因襲怪談「戻り人」(井之妖彦シリーズ新作)。とにかく驚くのは30年近くも前から一貫してる怪異の描写力の凄まじさ! それは勿論長篇でも堪能できるが各作趣向の異なる短篇集では多様でいてなお且つ全ての筆使いが凄いことにあらためて唸らされる。と同時に飯野氏のホラーは如何におぞましさ忌まわしさを極めていようともその底に特有の〈安らぎ〉がある気がするところが好き。いずれ劣らぬ傑作だが個人的には敢えて表題作を最推ししたい。ちょうど今秘かにアパートホラーを書きたいと夢想してるので目標にする意味でも(また夢想で終わるかもしれないが)。
飯野氏はあとがきで「まだまだ短篇ありますから!」と書いてる。これを契機に日下氏が第2弾第3弾を、いやいずれは短篇全集までも編まれんことを期待。

飯野さんありがとうございました!

ゾンビ・アパート

ゾンビ・アパート


























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