綾辻行人『人間じゃない』

綾辻行人未収録中短篇集『人間じゃない』(講談社2017/2)読。
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062204460

収録5篇いずれも既刊諸作と何らかの関連性あり。巻頭作「赤いマント」は『人形館の殺人』の後日譚──と言うことでこの際『人形館…』再読(結末知りながら読むこの小説の独特な感興に改めて戦慄)するもこちらは一転ユーモア含みの都市伝説ミステリで意外にも安心して?読めるまさにスピンオフの鑑。次の「崩壊の前日」は『眼球奇譚』所収「バースデー・プレゼント」の姉妹篇──が〈そこ〉繋がりで姉妹かと言う作者の悪趣味さ(※称賛語)再認識。中篇「洗礼」は〈綾辻行人〉一人称シリーズ『どんどん橋、落ちた』系譜となる凝りまくりの趣向作乍ら──作者を巡る実世界での辛い時期反映。「蒼白い女」は『深泥丘奇談』シリーズの番外掌篇。巻末の「人間じゃない─B〇四号室の患者─」は児嶋都画の漫画「人間じゃない」(『綾辻行人 ミステリ作家徹底解剖』所収)のための原作ストーリーをセルフカバー小説化したものとのことだが──遺憾ながら当該漫画未知。がこの1篇は個人的最快哉作! と言うのは『深泥丘奇談』に僅か乍ら鏤められたラヴクラフトクトゥルフ神話系小ネタを目にしてこの作者の意外な面に開眼させられた(竹本健治 我孫子武丸ら他の新本格系作家がその方面に全く無関心らしいのを秘かに残念に思っているだけに)と言う経緯があるためその具体的発露と目される(作者自身によって明示されてはいないが)本作には瞠目と感激。と言うより母体となる連作集『フリークス』自体その傾向なきにしも非ずではある──とは言え勿論そんな感想はこちらの身勝手な我田引水の誹り受ける惧れなきにしも非ずでもある──のだが。
嘗て「人間が描かれていない」と批判された(今ではそれこそ都市伝説とも言われるが)とされる新本格の30周年記念書がこの『人間じゃない』と言うタイトルとされたのは意図にせよ偶然にせよ誇りと諧謔を諸共に表わしているようで小気味よし──そう「人間じゃない」と宣しているからには「人間が描かれている」必要など最初からないわけで──その意味でも本書は本当に人間技じゃない──などと言ったことは既に巷間囁かれているのかもしれない──のだが。

ともあれ竹本健治最新刊『しあわせな死の桜』もようやく読み終え(後日レポート予定) 我孫子武丸『裁く眼』は既読で↓…
http://d.hatena.ne.jp/domperimottekoi/searchdiary?word=%BA%DB%A4%AF%B4%E3
…加えて綾辻行人の本書も斯く読了し 明日(5/13土)の鼎談観覧には何とか間に合わせられ安堵──していいものかは依然心許なくはある──のだが。



綾辻さんよりお贈りいただきましたありがとうございました!































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