『21世紀本格ミステリ映像大全』/小山正・大倉崇裕・千街晶之 映像ミステリを語る

千街晶之 編著『21世紀本格ミステリ映像大全』(2017 原書房)読──但し遺憾乍ら日頃視聴習慣ないアニメ部門割愛請寛恕。
http://www.harashobo.co.jp/

タイトル通り21世紀に入ってからの〈国内映画/国内ドラマ/国内アニメ/海外映画/海外ドラマ/バラエティ番組〉の分野別に網羅概説するが 当然乍らこの部門の近年の隆盛なかりせばの国内ドラマがページ数最多。個人的強印象は90年代以降ドラマ好きを以て任じていたつもりが 実は視ていないミステリドラマのほうが圧倒的に多い事実を知らされたことで これには些か意気消沈。そこでふと気づいたのは 本書では連続ドラマは徹底的に詳述紹介されている反面 所謂2時間ドラマ(実はこの呼称が孕む軽視感を好まず当ブログでは敢えて「2サス」を用いてきたが)系の個別紹介は『稲垣吾郎 金田一シリーズ』『吉敷竹史シリーズ』『野呂盆六シリーズ』『点と線』『獄門島』『そして誰もいなくなった』等の重要作に絞られ その他は羽住典子氏によるコラム「21世紀の二時間ドラマ事情」で補足される構成で 自分が視てきたものは数量的には連続物+重要2サス群よりも寧ろ〈その他の2サス〉だったのだと今更に感得(尤もこの感想には20世紀の記憶も混在しているかも)。その意味で羽住氏のコラムは限られた紙幅で膨大な作品数から適宜選択(人気シリーズからカルト作&最新作まで)紹介してくれており貴重。また今をときめく連続ミステリドラマ脚本界の寵児 黒岩勉氏もインタビューでは「二時間ドラマは意外と書いてるんですよ」「二時間サスペンスの昔からあるフォーマットは(中略)ある意味美しい」「そこは守りたい」と発言しており瞠目&感激。
連続物に未見作多いのは消沈乍らも今後視る愉しみ多しの歓喜?でもあり…そんな中からとくに食指は『ミステリー民俗学者 八雲樹』『探偵学園Q』『霊能力者 小田霧響子の嘘』『SPEC』『Wの悲劇』『ティーンコート』『高校入試』『実験刑事トトリ』『64』『1925年の明智小五郎』『警視庁ナシゴレン課』等になるが…これらだけでもとても全部は視切れまいとorz… ただ中でも『SPEC』はドラマ版未見のままいきなり映画版(『劇場版SPEC〜天〜』『劇場版SPEC〜結〜漸ノ篇』『結〜爻ノ篇』)を全て公開時即劇場観覧する暴挙を冒した禍根あり(不明点多くも例外なく面白かったが既にミステリではなかったと…)&本書での解説にある「『ケイゾク』と共通の世界観」と言う点も未知だったため特段惹かれることに。
以前のエントリでは『All Over クトゥルー』と期せずして同時期刊行とシンクロ感を強調したが 実のところそちらは相当の歳月をかけたものであるのに比し この『21世紀…』は企画から完成予定まで短時日だったため執筆陣は可成苦労あった模様。がその成果は情報豊富且つ万端的確な紹介記事揃いで見事。バラエティ部門の斬新視点も要注目。
海外映画では千街氏絶賛『ライフ・オブ・デビッド・ゲイルYoutubeレンタル視聴 巧緻極めた傑作と確認。(『ヴィドック』『マイノリティ・リポート』『ヴィレッジ』『女神は二度微笑む』『鑑定士と顔のない依頼人』『ピエロがお前を嘲笑う』は既見。個人的には『哭声/コクソン』も入れてほしかったところ)

21世紀本格ミステリ映像大全

21世紀本格ミステリ映像大全



…と言うわけで4/30月 『21世紀本格ミステリ映像大全』刊行記念【小山正・大倉崇裕千街晶之 映像ミステリを語る】於 Live Wire High Voltage Cafe
http://boutreview.shop-pro.jp/?pid=130271339

盛会満員。小山正氏は今般の『21世紀…』の手本となった先行書『越境する本格ミステリ』(2003扶桑社 ※上サイト↑での紹介「同じ版元」は誤)の監修者で(共監 日下三蔵氏)同書誕生の背景を語ったが 意外なのは小山 日下両氏が発案したわけではなく版元扶桑社の編集者Y氏が提案し両氏を監修に招聘したとの経緯。また大倉氏は『越境…』『21世紀…』両書に執筆参加しているが 小山氏 大倉氏共に強調するのは兎に角Y氏の熱意と辣腕で それに推されるように編纂し実現させた企画だった模様。また大倉氏は今般書の書き手でい乍ら 採り上げられているドラマ『福家警部補の挨拶』『警視庁いきもの係』他の原作者でもあり 映像化の話題では制作サイドの気遣いぶりや 改変を気にしない氏自身の鷹揚さが面白&興味深し。後半は3氏の映像ミステリベスト10披露だったが…配布された一覧を逸失してしまい(メモまでとったのに)悔恨orz… がとくに海外映像ミステリに詳しい小山氏の話が印象あり 中でもイギリスでのその方面ドラマ界の先鞭的シリーズと言う『第一容疑者』は何とか視たいものと。懐寒しのため懇親会断念。祝 待望書上梓!

越境する本格ミステリ―映画・TV・漫画・ゲームに潜む本格を探せ!

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余談乍ら…上記編集者Y氏は個人的に面識ありエネルギッシュさは実感。但し小山大倉両氏とは逆で こちらは「仕事ください!」と頼んでも貰えない現状orz…




付録 会場入り前 砂時計さんらと待ち合わせ&腹拵えの一端↓




























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