ハリー・カーマイケル『リモート・コントロール』/ヘレン・マクロイ『あなたは誰?』

経緯あって『2016本格ミステリ・ベスト10』(探偵小説研究会原書房)の「「海外本格」座談会 英米対決──本格はアイデアか、小説か」(笹川吉晴×羽住典子×横井司)を現場見学させてもらうことができ(10月終盤)、そこで話題になった作品の中で気になっていた2作。読んだところどちらも期待をも上回る面白さだった。
ハリー・カーマイケル『リモート・コントロール』(藤盛千夏訳 論創社)は交通事故という一見散文的な事件が意外にも錯綜した謎を生み、これは何かとんでもない真相が?…と惹きつけておいてラスト鮮やかな〈騙し〉が浮かびあがる。

一方ヘレン・マクロイ『あなたは誰?』(渕上痩平訳 ちくま文庫)は衆人環視の毒殺事件がポルターガイストや人格の揺らぎ等異常な様相を呈していき、ラストその様相を裏切らない驚愕の真相へと至る。

驚きへの期待を引っ繰り返して別の驚きに変える前者と、驚きへの期待にストレートに応える後者とは互いに逆ベクトルのようだが、強引に共通点を挙げるとすれば… どちらもタイトルがシンプルながらも秀逸(ともに邦題と原題がほぼ同じ)。これは決してふざけて言うのではなく、気になっていた原因の過半はタイトルにあった気がするし、のみならず両者小説の一部をなす重要性をたしかに持ってる。タイトルで想像を働かせることにより、前者では真相に宿る怖さが一段と強められ、後者では中盤で覚えた怖さをラストでさらに高められた。この〈怖さ〉というポイントでのカタルシスはホラー好きゆえの癖かもしれないが(それゆえにミステリーとホラーに実は概して差はないのではと思いつつ)、どちらも作者の狙いに最初からちゃんとあったものであるはずで、読み方として間違いではない…と自分に言い聞かせる。傑作度甲乙つけがたし!


リモート・コントロール (論創海外ミステリ)

リモート・コントロール (論創海外ミステリ)

あなたは誰? (ちくま文庫)

あなたは誰? (ちくま文庫)

2016本格ミステリ・ベスト10

2016本格ミステリ・ベスト10

…上記座談会中でとくに注目の一言──「本格ミステリの方法論でホラー書けるじゃん!」(笹川吉晴氏)


























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