レオ・ペルッツ『聖ペテロの雪』

レオ・ペルッツ『聖ペテロの雪』(垂野創一郎国書刊行会)
http://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336059529/

『赤い右手』をブログ〈プヒプヒ日記〉で採りあげてくださった垂野創一郎氏訳、ツイッター等での話題を見かけるにつけ気になっていた書。遺憾ながらこれが初レオ・ペルッツなので恐る恐る読。…が…
面白し! 1930年代という時代にこんな現代的(と言えるか判らないが)トリッキーさが濃厚に脈打つ小説が書かれていたことに驚き。今の日本の最先端本格ミステリ作家(深水黎一郎や米澤穂信?)の流れをもどこか感じさせるような。謎めいた事件に歴史と科学のペダントリが混交し、まさにめくるめく「記憶の迷宮」が紡がれる。が決して重厚難渋に過ぎるタイプの作品ではなく(いや充分以上な難解さ不可思議さを秘めてはいるが)長さからしても全く胃凭れなく娯しめる。平明で自然な訳文もそれに大いに寄与。精細な解説がまた凄い。読者がとても思い及ばない深みまで考えて訳されていたことが窺え感嘆。それも見識自慢といったものとは無縁なのが訳者の人柄まで思わせ好感。垂野氏訳す国書版ペルッツはこれで一応完結とのこと、今更だがようやく他作も恐れず読みたし(但し何れも本作より手強そう)。Uブックス版『第三の魔弾』も出てるし。
にしても『聖ペテロの雪』なるタイトルがそんな意味を孕む言葉とは…

聖ペテロの雪

聖ペテロの雪

























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