ゴード・ロロ『ジグソーマン』/チャールズ・ウィルフォード『拾った女』

扶桑社ミステリー続けて2作 どちらも超面白くて一気読み! ある種共通要素あるので一緒に紹介を。
ゴード・ロロ『ジグソーマン』(高里ひろ訳 2015/12月刊)
チャールズ・ウィルフォード『拾った女』(浜野アキオ訳 2016/7月刊)
http://www.fusosha.co.jp/books/detail/9784594073855
http://www.fusosha.co.jp/books/detail/9784594075071

『ジグソーマン』は久々出た赤背表紙の扶桑社ミステリーで気になっていたが何と懐かしのスプラッタホラーだった! マッドサイエンティストが人間を生きたままバラバラにして繋ぎ合わせ(そこが死体を繋げたフランケンシュタインと違うところ)生かし続けるというグロ過ぎテーマだけ見るとよく今こんなの出せたなと思うが、その描写の突き抜け度があまりに物凄く〈厭さ〉よりもむしろ哄笑すら誘う域。作者も心得ているらしく鏤められたブラックなユーモアがそこを増幅。且つ又酷い目に遭った主人公が逆襲に転じる後半はスペクタクルとバイオレンスアクションの釣る瓶打ちで息もつかせない。救われない話なのに読む側はなぜか救われた気持ちになること必至? 同じ扶桑社ミステリーでならリアル過ぎる残虐さが厭でたまらないジャック・ケッチャム隣の家の少女』ではなく能天気な娯楽ホラーに徹したリチャード・レイモン『殺戮の〈野獣館〉』に近い世界──がグロさはこちらがより勝るので注意。

一方の『拾った女』は原書1950年代刊行で「幻の傑作ノワール」(帯より)とあるとおりハードボイルドな雰囲気のクライムノヴェルだ──が実は何とそう見せかけた?とんでもないバカミスだった!(※勿論褒め言葉) アル中男がアル中女を拾い都会の暗闇に沈むうちに地獄巡りが始まり…というサスペンス小説としての展開からは想像できないラストが本当に驚かせる。個人的にはつい『狂嵐の銃弾』を連想してしまうがストーリーの巧さも衝撃度もこちらが上。また解説の杉江松恋氏も注目している後半の犯罪性精神治療が延々語られるくだりは、これまた個人的乍らディック『あなたをつくります』を何となく思わせて惹かれたり。

その両作の期せずしての最大の共通点は、どちらも自堕落人生を送って世界に絶望している男の一人称で語られるところで、加えてどちらもそんな境遇に追い打ちをかける悲劇に遭う救いのない物語だが、にも拘らずともに愛すべきキャラ性を具え感情移入して読める。書かれた時代は半世紀近くも違うが(『ジグソーマン』は2000年代)「B級」あるいは「パルプ」等の冠詞がまさに相応しい2作にジャンルの垣根をも超えて純エンタテインメントの佳さを改めて痛感。

因みに前者解説で風間賢二氏がシグラー『殺人感染』を引き合いに出してくれているのも嬉。

ジグソーマン (扶桑社ミステリー)

ジグソーマン (扶桑社ミステリー)

拾った女 (扶桑社文庫)

拾った女 (扶桑社文庫)



























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