佐藤究『QJKJQ』

62回乱歩賞作 佐藤究『QJKJQ』(講談社2016/8月刊)を読む(Kindle版)。

破天荒──なようでいて考え抜かれた小説。殺人に駆られる狂気憑きとも言える一族が主要人物だが社会派的なリアルな方向へは行かず(大きな意味では一部そういう含みもあるが)と言って所謂犬神家的な日本的怨念の風景になるわけでもなくある種超現実型とでも呼び得るような独特な世界を現出させている。小説の構造自体に大胆な企みがあり作中で言及されるエッシャーの絵を思わせる三次元ではあり得ない地平を幻視させるようなところがあってひょっとしたらそこが一番作者の書きたかったものかとも。その意味で乱歩賞よりメフィスト賞やホラー小説大賞あたりのほうが似合いそうな気もする…が他でもない乱歩賞がこの作を選んだところに大きな意味があるのかも。挑戦的問題作。
ただテーマからして当然とは言え残虐な殺害&拷問等のくだりが個人的にはちょっと苦手(今どきのミステリーでそんなこと言ってられないだろうが)…でありながら折角だから?その面にもっと執拗に紙幅が割かれたほうがよかったようにも。逆に背景説明めいた文が長過ぎたのが勿体ないと。が小説の語り自体は少女の1人称による短いセンテンスの現在形多用文が非常に巧みでその点が世界観構築にも大きく寄与していそう。
初めに非犬神家的風景と書いたがそれはあくまで雰囲気上でのことであるいは全く新たな形の犬神家再建の試みなのかも?…などと思えてきたのは妙なもの。
読後知ったが作者は別名義での群像文学新人賞作家でもある由。

QJKJQ

QJKJQ




























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