A・メリット『魔女を焼き殺せ!』(新訳)

A・メリット『魔女を焼き殺せ!』(森沢くみ子訳 アトリエサード ナイトランド叢書 2017/8月刊)読。
http://athird.cart.fc2.com/ca9/204/p-r7-s/

これは何と言う物語だろうか。最終的には怪奇小説であり乍ら 謎解き度の濃いスリラーミステリーでもあり 同時に… 暗黒街のギャングたちが大挙して重要な役割を占めるところは変種のハードボイルドでもあって まさにパルプマガジン全盛期の1930年代に連載されたと言う時代性如実な徹底娯楽作品。主人公は語り手の頼もしき医師ローウェルだが その医術に助けられる裏世界の顔役リコリ及び手下たちが何とも佳きキャラ揃いで悪役とは呼び難い好レギュラー陣をなす。その一方で展開の軸となる連続変死事件は人形・サーカス・魔女…等々耽美的ホラーをも思わせる方向へと傾斜し それら両雰囲気のある種ミスマッチなアマルガム効果が独特な世界を現出。クライマックスの手に汗握らせるサスペンス&恐怖性は強力で 帯の惹句通り作者のストーリーテリング才爆発の傑作。
…実のところ個人的にはこの作家の長篇としては 秘境冒険小説『黄金郷の蛇母神』を読んでいるのみで善い読者とは言えず この『魔女を焼き殺せ!』の旧訳版(徳間ワールドホラーノベルシリーズ)はなぜか所持したまま未読でいたのを偶々今般実家片付けで確認したが…お陰でこの新訳版での初読で思い切り愉しめたのは期せずして福運? また波瀾万丈の異境物『黄金郷…』からは一転 この『魔女を…』は大都市NYが舞台だが 面白い物語を生む迷宮的空間としては都会も密林もこの作者にとっては同根なのかも。
検索すると旧版古書には現在高値がついているが 入手したときはそれほどではなかった筈(だからこそ買ったに相違なく)。因みに同ホラーノベルシリーズではロジャー・マンベル『呪いを売る男』も古書高額で どんな話か興味唆るが…そちらまで本叢書に期待するのは高望みか。
解説によれば本作はトッド・ブラウニングにより映画化され(『悪魔の人形』未見)DVD化もされている有名作のようで関心湧く。なお作者メリットにはローウェル博士の活躍する未訳作もあるとのことで 願わくは本書による牽引あれかしと。

魔女を焼き殺せ! (ナイトランド叢書2-6)

魔女を焼き殺せ! (ナイトランド叢書2-6)



『魔女を焼き殺せ!』はアトリエサード社より恵与賜りました、ありがとうございます!


























.