黒史郎『童提灯』/おおぐろてん『童提灯1』/コミック版発売記念トーク

黒史郎『童提灯』 (創土社クトゥルー・ミュトス・ファイルズ 2015/8月刊)
http://www.soudosha.jp/Cthulhu/warabe.html

日本土俗グロテスクの極み。エグさは覚悟するもここまでやっているとは…がそのあまりの突き抜け度ゆえに読み終えてみれば不思議と厭悪感は薄く却って爽快とすら。ヘタレゆえ苦手なジャック・ケッチャム平山夢明のリアル過ぎる厭さ怖さとは異なり幻想小説面が大きいのが救い。またグロ面も友成純一あるいは飯野文彦の一部の作品さらには綾辻行人『殺人鬼』シリーズにも通じそうな「敢えて極められたグロ」とでも言うべき透徹の趣きがあり…一方でそれらのどれとも異なるのはやはり徹底した〈和〉(と言う語感が合うかは微妙だが)の物語である点。時代や地域は定かならずも(主人公アザコが序盤「ぼく」と自称するのは現代のようでもあり「都(みやこ)」等の語が出てくるのは近代未満のようでもあり)そんなことは大した問題ではなく冒頭の象徴物〈鎌〉に始まり最大の題材である〈提灯〉は勿論〈鬼〉〈鯨〉〈オシラ様〉〈オエベス様〉etcetcの徹底した〈和〉風怪奇変幻イメージの大群がこれでもかとばかりに無数に縺れ絡まり終局の人間対鬼(=妖怪)の大戦へと雪崩れ込む。意外なほどにも細部と総体が見事に(or危うく)調和したこの躍動する〈譚(ものがたり)〉感は最早痛快と呼ぶしか!?…
本作はクトゥルー・ミュトス・ファイルズの1巻として出され帯にもクトゥルー神話であることが告げられているが作品自体は終始その面をわざと暈すかのように記述されその点が寧ろ効果的に作用しているように。ひとつ仄めかしめくのは「アザコ」なる名が「アザ〇ースの仔」のようにも読めることだが…如何に?

童提灯 (クトゥルー・ミュトス・ファイルズ)

童提灯 (クトゥルー・ミュトス・ファイルズ)

おぐろてん『童提灯1』(創土社クトゥルー・ミュトス・コミック 2018/2月刊)
http://www.soudosha.jp/kinkan.html
作画のおおぐろてん画伯が小説版の装/挿画担当でもあるため絵柄をあらかじめ見知っていたお陰で比較的すんなり入り込め(ヘタレなのでもし日野日出志級のグロ過ぎ画風だと原作のエグさと相俟って読む気になれなかったかも)。予想通り絵自体が非常にスマート&スタイリッシュな点が大きな救い。且つまた主人公アザコが終始透明な愛らしさを保って描かれているのも安心感に寄与し酷い目に遭う場面でも目を背けるとまでは至らず安堵。がやはり悪役とくに火車童(かしゃわっぱ)3人の表情の厭さや終盤登場の童提灯の滑稽味あるがゆえの悍ましさの描写等流石。原作の過剰さと補完し合うこの作風は大いに相応しく次巻以降にも期待(まだお話の1/3にも達していないので2巻で完結するとは思えず…)。

童提灯1 (クトゥルー・ミュトス・コミック)

童提灯1 (クトゥルー・ミュトス・コミック)


2/10土『童提灯』コミック発売記念トークショー&サイン会 於 書泉ブックタワー
https://www.shosen.co.jp/event/70005/
黒史郎氏(原作) おおぐろてん氏(作画) 山田剛毅氏(装丁)
満席盛会。原作に出てくる童提灯を始めとする数々の異形の多くが作者黒氏の純粋創作とのことで発想の突飛さと想像力の豊かさに驚き。またクトゥルー神話の面をあまり出したくないとの思いは予想されたこと乍らもその意図の強さにはやや意外の気味も。おおぐろ氏はやはり原作の悍ましさをどこまで出すかで苦労あった模様。ある場面で酷い悪役キャラへの憎しみをペンに込めたとの吐露には共感の笑い起こり。山田氏は本の外観に怖さを如何に出すか等デザインにとどまらないアイデアをも提供した由。帯の地の部分等見え難いところにも技術込められているらしく。編集&3氏の良好関係による本作りが伝わり和み。
トーク終了後コミック版に3氏よりサイン頂き。

↓会場隅にて記念クリアファイル購入。

↓裏面 重要人物ヒコザエモン&じゃんけんプレゼント企画でゲットした缶バッジ(左)。

閉会後近くの某店にて有志食事&歓談。あんずさん&吉田仁さんと大河ドラマ話(!)等。

あんずさん吉田さん&お誘いの豚蛇さんにいつも乍ら感謝!


























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