新井素子 瀬名秀明 千澤のり子 葉真中顕 深水黎一郎 宮内悠介『謎々 将棋・囲碁』

新井素子 瀬名秀明 千澤のり子 葉真中顕 深水黎一郎 宮内悠介『謎々 将棋・囲碁』(2018/2月刊 角川春樹事務所)読。
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こと将棋に関しては巻末作瀬名秀明「負ける」の視点人物(主人公)の「駒の動かし方は知っているが子供のころに遊んだ程度で、振り飛車や矢倉囲いさえよくわかってはいない」と言う脳内台詞と全く同じで小学生頃は実際将棋でよく遊んでいたし好きだったほどなのに大人になった途端に何だか動かし方以上の難しいことを知らないと本当の将棋はできないのだと判り即座にやらなくなってしまい──つまりは「難しいこと」を憶えられない頭の悪い人間だったためだが──一方囲碁は昔も今も全く知らないし知ろうと思わない(申し訳ない話だが)ため折角本書を頂いてい乍ら読み進められるのかと危惧したが…幸いにもその手の読者に配慮してか「難しいこと」まで知らないと読めない書き方がされている作は1つもなく──と同時に意外?にも其々楽しめる結果となり安堵(それでも未だ全て理解し切れたとまでは言えないが…)。
全6作中将棋囲碁テーマ其々3作ずつの配分だが驚くのは収録順冒頭から4作がいずれも破天荒設定と言うかある種の〈笑い〉を意識した作りであること。新井素子「碁盤事件」(囲碁)はぬいぐるみや碁盤やテーブルや食器棚や座布団が擬人的に殺人事件を推理する"一見"楽しそうな展開のファンタスティックミステリー。葉間中顕「三角文書」(将棋)は爆笑誘うネーミングの未来人?たちが将棋を思わせる超古代文書の謎を解いていく奇想小説。宮内悠介「十九路の地図」(囲碁)は植物人間となった老人の脳波治療に囲碁が利用されるユーモアSF(十九路とは碁盤の種類の由)。深水黎一郎「※七五歩の悲願」(将棋)は将棋の駒とそれを指す人間とが交互視点で局面を語る奇天烈な仕掛け小説…と言う具合に4作共どこか人を食った謂わば〈地に足のつかなさ〉が特徴であり面白さである作品群。また最初に触れた巻末作瀬名秀明「負ける」(将棋)もAIによるゲームの可能性を探る一種のSFであり笑い要素こそないもののそれらに加えることができるかもしれない。そんな中でラス前作千澤のり子「黒いすずらん」(囲碁)は孤児となった少女が肉親たちの秘密に翻弄されるミステリーでこれのみが地に足のついた世界の話である点が本書中では異色と映る。と同時に鮮やかな騙しによってゾッとさせるホラーでもあるところもコメディ面の強い他作と対照的でありそれらの面が全体のバランスをとる役目を負っているようにも。
「黒いすずらん」(探偵小説研究会誌『CRITICA』10号より再録)以外の5作は雑誌『ランティエ』掲載作とのことで分野こそ違え傾向がどれも極端気味なのはそもそも依頼時の方針ゆえだったのかも。結果的に『謎々』と題され乍らも読者に過度に謎解きを強いずに読ませてくれる競作集となり佳き試みと。これで囲碁あるいは将棋に強く興味持ち「やってみよう」となれば作者諸氏&版元としてはしてやったりだろうが…個人的には遺憾乍らそこまでは至らずでご容赦請う次第…でも面白かったからオッケー!

謎々 将棋 囲碁

謎々 将棋 囲碁

※深水黎一郎「七五歩の悲願」の正しいタイトルは頭に将棋の黒駒マークあり。


千澤のり子さんありがとうございました!

↑千澤さんスペース空けてくださったが…他の作家さんたちからサイン貰う機会はありそうになく…




























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