結城昌治『あるフィルムの背景』『夜の終る時/熱い死角』/日下三蔵+永嶋俊一郎トーク結城昌治

日下三蔵永嶋俊一郎トークに備え結城昌治『あるフィルムの背景』『夜の終る時/熱い死角』(共に日下三蔵ちくま文庫)読。前者は1972年初刊の短篇集に新たに5篇を加え「ミステリ短篇傑作選」の副題を付すが実質は帯惹句の通り所謂イヤミス傑作集と言ってよくある夫婦の秘密を巡る悲劇を描く中篇表題作や幕切れがあまりに強烈な「惨事」始めブラック過ぎる話揃いで外れなし乍ら個人的にはとくに「老後」の身につまされ感が最厭。後者は1963年初刊の推協賞長篇『夜の終る時』+「熱い死角」他刑事物短篇4作による最新刊「警察小説傑作選」だがこちらも勧善懲悪物はなく悪徳警官──と言うより警察官なるがゆえに覗き見ざるを得ない深淵が通底テーマでとくに前後半の対比鮮やかな『夜の…』が峻烈。両書とも絶望のさらに一歩先の絶望観で占められ後味の悪さ超一級。直木賞作『軍旗はためく下に』で戦争の狂気を語る声がこれら平和時の社会を書く際にも殷々響いているように。

日下三蔵の昭和SF&ミステリ秘宝館 結城昌治編 ゲスト永嶋俊一郎 於Live Wire Voltage。
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前半は永嶋氏(=『厭な物語』編者でもあり)の結城作品偏愛個人史を枕に日下氏による上記両書の編纂背景や作家結城昌治の概観等。後半は配布の著作リストを基に隠れた注目作の紹介等。当然両氏とも全作読破し単なる解説ではなく談話の端々に理解と味読の深さ如実。また一作家結城昌治のみにとどまらずミステリ史全般にも興味深い言及多く触発大。因みに『あるフィルムの…』4刷の由(=日下氏談)で驚き。「惨事」原作ドラマの話食指。休憩時に初対面の小野家由佳氏より著書『結城昌治読本』(上の写真↑右端)を直に購入でき&隣席の千街晶之氏とは戸川昌子作・出演『猟人日記』の話でき共に僥倖。





























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