フラワーしげる『ビットとデシベル』

Amazonにて入手せしフラワーしげる歌集『ビットとデシベル』(書肆侃侃房)を読む。
http://www.kankanbou.com/kankan/index.php?itemid=639

作家・翻訳家 西崎憲歌人としての名義。

何という自由さだ!
西崎憲のツイートを目にするときいつもホッとさせられるのは、「表現てのは何でもいいんだ、何にも囚われずに思ったことを好きに言えばそれでいいんだ」という実は至極当たり前のことを発信してくれてるように思えるからだ。この歌集はそういう〈行き方/生き方/活き方〉が一番端的な形で出た──短詩というコンパクトな表現形式のゆえもあり──発信者自らによる最適な実例じゃないか、と勝手に思う。
帯に挙げられてる1首↓はそんな自由さのこれまた最適例のひとつ。


 おれか おれはおまえの存在しない弟だ ルルとパブロンでできた獣だ


が個人的に一番好みなものの一部を──少し勿体ない気もするが──3首ほど引いてみる。


 ははあ、ほんとうにこう暗くなってはもう侍も通るまい笛を売ろう

 公園は19 警官は1万体 隣接する区は非常態勢に入り内側の樹齢と囁きかわす

 森のような場所から夏のような時間にやってくるキチン質の兄


「優れた詩的作物はすでに夥しい数のものが存在し(中略)しかし世界にある文はすべてひとつの詩の一部という考え方もあり、だったら部分がもう少し増えてもべつに差し支えはないのかもしれない」…
これは「あとがき」冒頭部。そうなのだ、バべルの図書館は無限なるがゆえにいくら無限になってもかまわない。だから君もどんな表現でも好きにしてみたらいいじゃないか、この本はそう促しているような気がする。何にでも囚われることをよしとする風潮の中で目の鱗を落としてくれる、そんな歌集だ。

ビットとデシベル (現代歌人シリーズ)

ビットとデシベル (現代歌人シリーズ)






創作 語学 音楽…西崎氏はオレにない才能を多々持ってて共通点は少ないが(世代面を別にして)ひとつ判ったのは氏もモダーン今夜が好きだってこと。
ってことでモダーン今夜「風の道しるべ」↓(自前up)





























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