河内実加『弥生!!』(※ネタバレ気味注意!)

河内実加 作『弥生!!』全8巻(小学館ちゃおフラワーコミックス1989〜1990版)読了、超々面白かった!!

作者の発表時の年齢を考えると(いやそれ抜きにしてもだが)天才の為せる業だ、竹本健治匣の中の失楽』に匹敵する。──いや漫画家とはみな基本天才だろうが(小説家もだが)。
それにしても…このバイオレンスでいながら超可愛い主人公(堂本弥生)という発想はどこから来るんだろう?──しかもその相手役男子(西脇陸 にしわきりく)も同様のバイオレンスさというのがまた。普通女子が強い場合男子は弱くて守られ役とかになりがちそうなところを…
弥生は自分のことをオレと呼ぶが個人的に思い出すのは旧モーニング娘。吉澤ひとみがたまにオレ自称してたことで芸能界屈指のスポ魂女子&男勝りサッパリキャラとアイドル性が同居する(「天才的に可愛い」とデビュー前につんく♂評)よっすぃ〜と弥生はある意味似てるかも?──タッパを別にすれば。がそんな余計なことは兎も角…

(※以下若干深入り気味につき注意)



1、2巻は弥生と陸がまだ純然たる友達関係の段階のお話でその中で先に弥生を異性として意識する掃部関昌己(かもんぜきまさみ)と七瀬明志(ななせあきし)の出現で却って陸と弥生がお互いを徐々に意識し合うことに。がこの掃部関と七瀬が実に好キャラ。七瀬は背が低くイケメンというより可愛い男子系だが3巻途中で卒業のため弥生争奪戦線から離脱するのが惜しい(のちにカメオ出演あり)。掃部関は眼鏡をかけたり外したりするのでたまに陸と判別し辛い難あり(笑)。
3巻では後半から海外放浪帰りの陸の兄 西脇流(ながれ)登場。陸(190cm)以上の長身二枚目ながら意外にも超能天気な脇役キャラ。煮え切らない陸の恋成就のため弥生の弟 葉月と凸凹コンビ組み裏工作に跋扈するのが可笑しい。
4巻ではそれが奏功してか?ついにキスにまで漕ぎつける陸と弥生だがその先またもなかなか進展せずモヤモヤ続きで陸がシリアスに悩んだり。そういうイジイジ状況に耐えられず道場破り廻りするあたりが何とも弥生らしく。
5巻では ゲストキャラの女の子 五月(メイ)の恋のため仲間たちともども一肌脱ぐがその際発揮する弥生のバイオレンス能力に注目(彼女の威力は「身体能力」なんてレベルじゃないやはりこう呼ぶのが適)。
6巻ではライバル校の謎の男 森野石松から陸に対し弥生を賭けて突然の挑戦。どうやら陸の能力に惚れての勧誘の裏返しらしいがこれが勝つためなら手段を選ばずで本シリーズ中唯1人とすら言えるイヤな奴。それでいてルックスは超いいので困る。
7巻ではそんな森野と陸がラグビー対決へ。が森野は手下を使って陸を怪我させるから酷い話。この手下連が美少年ゲイだったりビジュアルいいのに名前変だったりといちいちクスリとさせるのが芸細かし。
最終8巻で陸はついに負傷押してラグビー本番。その描写が何とも凄い! 作者の本格度が半端ない(当方のようなラグビー門外漢にも伝わる熱量)。クライマックスはアストロ球団か?という迫力!
弥生と陸の恋愛模様がシリーズ終盤の森野の登場によって強烈なスポーツ熱に変換されていくところが意外なようでありながら最後まで行くとこれこそが弥生という個性にとって最高の道であることが感じとれる。理屈じゃなくてまさに画(視覚)で。様々な脇筋も含めて素晴らしい青春群像劇。
1巻目が「第1部 第2部」構成になっていることからして(勝手な憶測に過ぎないが)ひょっとすると2巻以降はその好評を受けて描き継がれたんじゃないかと思わせるがそうなら全8巻のストーリー面&世界観の高完成度にさらに舌を巻く。
続きを読みたくさせる もっとこの世界に浸りたいと思わせる。名作。


弥生(↑右上)は2頭身とか3頭身とかじゃないのにこの髪型のふわっと大きいところや聞かん気そうなポーズ&表情等で小柄感がよく表現されてる。たまにボールや人間?蹴るときこの脚をパーっとあげるとスカートの中まで露わに。その辺までしっかり描かれてるのがまた流石。

現在はKindle始め各種電子版で発売の模様。





























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