竹本健治『殺人ライブへようこそ』

竹本健治『殺人ライブへようこそ』(徳間文庫1996)

のちに牧場智久とコンビを組む武藤類子デビュー作。1991年のトクマノベルス版初刊時買ってたが↑表紙絵(右側)に何となく気後れしたのか(いや決して悪いわけじゃないむしろ味のある絵だとは思うが…)そのまま手を出さず仕舞いで来たものを今にしてようやく徳間文庫版(1996)で。こちらの装画(左側)担当 末武康光氏は作者竹本氏の友人とのことで流石の心得これぞザ・武藤類子のイメージ。お話はミュージシャンの世界舞台でライブハウスで殺人発生。類子は剣道に打ち込む女子高生だが女流ギタリスト速水果月のファンになったことから事件に巻き込まれ… 類子は勿論可愛いがこの速水果月が女だてらにカッコいい。元々竹本氏自身昔ギターをやってたと聞いた気がするしこの種の音楽にはきっとかなり原体験的に関心があってそれがこの魅力的なキャラ作りに反映してるのかも?──あまりその辺突くとネタバレになりかねないが題材と密に絡んだツイストが綺麗。こんなに読み易く且つ佳い小説はもっと早く読むべきと悔い。音楽の世界とそれをとり巻くファンの世界もリアルで類子の瑞々しい青春がそこにピタリ嵌まり。また作中に速水果月の書く歌詞が出てくるがこれがまた「詞」と言うより既に「詩」で果月本人に輪をかけカッコいい! 当然竹本氏が作った詩なわけで高校の文芸部出身者としては些か悔しくもあり(竹本氏も文芸部だった由)。さらに本作ノベルス版覗くと作者あとがきに谷山浩子綾辻行人氏らとの音楽を巡る関わりがこの小説に資していた旨述べられてて目鱗。このあとがきは文庫版にはなく惜しいがその代わり同版の大森望氏による解説は肩肘張らない軽みありつつも的確。
故あり『涙香迷宮』未だし。そちらには武藤類子は出てこないと思うがある種の遊戯詩がテーマらしいので作者の詩の言葉への関心が出てる本作とは必ずしも関連なしとは言えず?

↓ ノベルス版裏 著者近影(1991当時 37歳ぐらい?)



速水果月がカバーする谷山浩子「森へおいで」オリジナル。作中 本人許諾で歌詞引用あり。























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